数学はお好き?ケネディ・スクール流数学術。
みなさん、数学は好きですか。
私は、小学校でアメリカに行った時、
英語が全く喋れない中で唯一評価されたのが算数と美術だった、
という原体験があり、
(※アメリカは小学校から電卓を使うので、
日本人的な暗算ができれば大体勝てたりする。
日本の義務教育、九九、有難う!!!!)
また、仕事では結構数字を使うので、
ツールとしての数学そのものに苦手意識を持ったことは無いものの、
かと言って、大学は法学部出身でもあり、
自分が「数学大好き人間です!」とは残念ながら言えない。
むしろ、小学校の時に、算数の問題をやりながら
「将来お嫁さんになったら、お買い物の時に計算する以外、こんなのどこで使うんだろ。」
と素朴に思ったことを覚えている。
そんな私であるが、
ケネディ・スクールのサマープログラムで課されている
毎日1.5時間の数学(厳密には”quants”なので定量分析など)の授業については、
こう叫びたい。
この数学は好きだーーー!!!!!!!
と。
***
毎回授業は、ディスカッションで始まる。
数学でディスカッションって・・・
と日本人的には思うが。
実際の数値、論争となったデータや政策課題について議論が進む。
例えば教壇にはこんな問題が映し出される:
- 2001年から2005年にハーバードで教授(Tenure)に指名された男女の表について「Larry Summers学長は女性をあまり上げていない」というのは統計学的に事実と言えるか。(これは、実際に批判の嵐を巻き起こし、その後の諸々発言も含めてSummers学長の辞任まで尾を引いた内容の一つ。)
- 40代の女性のマンモグラフィーは検査を受けた人と検査で指摘を受けた人と実際癌になった人の数値をどう分析するか。保険会社はどう考えるか。(これは実際に女性で初めてかつ唯一数学のノーベル賞と言われるField Medalを受賞し、40歳の若さで昨年乳がんにより亡くなったMaryam Mirzakhaniスタンフォード大学教授と関連づけて説明された。)
- 黒人と白人のマリファナによる逮捕率のデータは何を示しているのか?税金を下げることが雇用の増加につながるのか?を統計的に考えるとどう検証できるか。
- ビックデータの解析と統計学的な検証と前提条件は何が違うのか。
宿題は数式を解くトレーニングに加えて、
- 「この面積で森林火災を防止するための、最適な防火帯(Firebreak)の数を計算せよ」
- 「アメリカの都市についてジップの法則(Zipf's Law)が成り立っているか、人口データを元にエクセルで検証せよ」
- 「アリゾナ州の選挙区の選挙区の恣意的な区割り(Gerrymandering)について分析せよ」
というような捻ったものや、
「来週の月曜日にケンブリッジ市議(ケネディ・スクール卒業生)が授業に来ます。今、市の課題になっている銃の発砲事件の増加について警察が取得したデータを渡すので、市の開放しているOpen Data(例えば、人口分布や所得や投資計画など)も分析した上で、発砲事件を減らす方法についてグループに分かれて市議に提案してください。」
という、
答えのない、前提データも不足している、リアルな政策マターについての分析もある。
試験も、フォミュラシートという名前で計算式のカンペ1枚の持ち込みがokとなっており、
計算だけでなく、記述で答えさせる問題が多い。
***
日本人的には(というか私的には、かもしれない)、
「微分せよ」と言われて、計算式を見ると即座に手が動くが、
「これってなんで2段階微分するの?」
「これってなんで自然対数使うの?」と問われると、
うっ・・・と考えてしまう。
自分の表面上の知識が「生きた知識」になっていなかったことを実感した。
(実学を重視した福沢先生、ごめんなさい。)
結構毎回の授業の負担は大きくて、
エンジニア・数学部出身者・エコノミストなどの強者達から
どんどんアイディアが出される議論の中で
なかなか発言できない自分にブルーになるが、
- このグラフ・表を分析するにはどんな数式が必要か。
- 抜けているのはどんな前提条件か。
- この分析結果は何を伝えているのか。
- 実際の社会で同じ実験を試みた時にぶつかる壁は何か。
こう言ったディスカッションを積み重ねることで、
本当に実社会で使える数学を学ぶことができる
非常に面白い経験だ。
***
イギリス人の年配女性である教授は、
生徒を自分の家に招いてパーティをしてくれたり、
とても優しくチャーミングで、
「実世界では、計算はエクセルがやってくれるから、
数式などのツールをどう使って、
何がわかるのかということを理解していることが大事よ」
と説明する。
そう、ケネディ・スクールのQuantsの授業は、
まさに私の小学校の時の素朴な問いに応えてくれるのだ。
〆
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