リーダーシップとストーリー。
ケンブリッジは葉っぱが色付いていて、
歩くととても綺麗な景色が観れる。
きっとすぐさま雪の季節に突入してしまうのだろうけれど。。。
ところで、
最近、人前で話したりすることを、積極的に引き受けている。
先週末はボストン・日本映画祭で
映画監督、憲法学者の先生、同世代の弁護士さんや国際関係を学ぶ友人が参加した
パネルディスカッションのモデレーターを。
今日はニック・バーンズのクラスのシリア紛争のシミュレーションで
米国のスポークスマン役を務めた。
仕事においては人前で話すことにそんなに抵抗無いタイプであるが、
英語だとちょっと緊張感が高くなって、
日本語だったら手を挙げるだろうシーンでも、
5秒ぐらい躊躇してしまう。
しかし、インドやアフリカの友人達は躊躇しない。
(中国・フィリピンを除く他のアジア人は比較的同じ感覚を共有している気がする。。。)
英語云々以前に、前後の文脈だって気にしない。。
彼らのハートの強さを見るにつけ、
自分の意見を言うことと英語の完成度は関係ないと思い知らされる。
「日本の影響力の低さ」をこんなところで体現している場合ではない。。。
ケネディ・スクールのクラスの中も世界の縮図、戦いなのだ。。。
・・・と、そんなことを考えながら、
以下のGanz教授の授業の経験を経て、
「自転車に乗るように」
話すことも練習だなぁ、と実感し、
このリスク・フリーな環境の中で
自分の背中を強制的に押すようにしている今日この頃なのでした。
***
さて、中間試験を乗り越え秋学期も半分が過ぎて、
半期の授業(モジュールと呼ぶ)が終了した。
今回、Marchall Ganz教授の
「Public Narrative」という授業を取っていたので、
当該授業について紹介したい。
Ganz教授は有名教授の一人ではあるものの、
実は、私が最初に授業選択を考えていた時は、
正直「Public Narrative」と言われてもピンとこず、
取る授業の候補に入っていなかった。
しかし、
ケネディ・スクールの卒業生でもあり、
現在はハーバードの社会学部で研究員をされている
鎌田華子さんとお話をしたことをきっかけに、
とってみようかな?と思った。
鎌田さんは、
Ganz教授の教える市民セクターを原動力として人を動かすリーダーシップ、
コミュニティ・オーガナイジングを日本に広めるべく
「コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン」を立ち上げた方だ。
彼女の活動を伺いつつ、
将来について話したりしていたら、
「Public Narrative、是非取ったらいいよ!」
と薦めて頂いた。
なんだかそんな新しい領域を学んでみるのも良いか・・?と
彼女の魅力に惹かれるままに、
秋学期取ろうと思っていた4科目に上乗せして、
追加で半期のコースを1科目とることにした。
(ちなみに、5科目取るのは、キャパ的には結構キツかったので要注意。)
Ganz教授のクラスは、
100人以上の大教室で開催されるにも関わらず、
床に座る人が出るくらい多くの人で溢れていて、
教育大学院やビジネス・スクール、MITやフェローの人など、
ケネディ・スクール以外からも生徒達が集まって来ていた。
***
結論として、この授業、取って良かったと思う。
大きくは以下の3点で、
今まであまり意識していなかった視点を得ることができた気がするからだ。
① 民衆を突き動かすリーダーシップ。
Ganz教授は、Public Narrativeを
「リーダーシップの練習」と位置付けている。
先生の定義するリーダーシップは、
”To lead is to accept responsibility for enabling others to achieve shared purpose in the face of uncertainty “である。
すなわち、
「申し訳ないけど、どうにかお願い!!」
というような「私の目的」に他の人について来てもらうのではなくて、
「これはあなたに取っても大事なことだよね?一緒に目指そう!」
という、「同じ目的shared purpose」に向かって、
人々が「自発的に」動くような、
そんな責任を引き受けて先導をできるのが、リーダーであると。
これはなかなか市民運動をオーガナイズして来た教授らしい、
納得感のあるリーダーシップの形だと思った。
② ストーリーを通じて感情や価値に訴えて人を動かす、と言うこと。
上述のリーダーシップ、「人を動かす」にあたって、
教授は「ストーリー」、すなわち「物語」を使うことを重視している。
自分がなぜその価値のために戦うのか、という源泉の部分から始まり、
なぜそれが必要なのか?みんなにとってどんな意味なのか?なぜ今なのか?
そういったことを訴えていく中で、
人を共鳴させ、動かすのは「物語の力」であると。
日本ではあまり、
「感情に訴えて共感を得る」という力は、
明示的なスキルの一つとして認識されていない気がするが、
実際に世の中でリーダーとして活躍している人はこのスキルが高い。
これをある程度フレームワーク化して勉強する、と言うのは
自分にとっては非常に新鮮な試みに感じた。
例えば、ヒラリーとミッシェル・オバマのスピーチを聞いて分析したり、
実際、影響力がある人=人々の琴線に触れる「響く」人が
どんな風に「物語」を語っているのか。
そのエッセンスを感じることができた。
③ 練習あるのみ。
この授業が構造として面白かったのは、
全員で受ける教授の講義やビデオの分析は週の半分で、
残りの半分は、少人数の教室に別れて、
ひたすら毎週毎週、
先生のフレームワークを活用して物語を作り、
仲間に語ってみて、
ダメ出し(コーチング)を受けるというところだ。
TF(Teaching Fellow)という先生のフレームワークを習得している生徒・卒業生などが、
指導員として色々なアドバイスや相談に乗ってくれ、
そしてクラスメート達と語り合い、スピーチを聞かせ合いながら、
最後は、自分が到達したストーリーでスピーチをクラスの前で行い、
そのスピーチを録画されたビデオと、振り返りの分析レポートで成績評価される。
Ganz教授はこの練習過程を
「自転車に乗るようなもので、最初は落ちるけど、じきに乗れるようになる」
と表現していた。
実際、講義を聞いただけでは絶対実践できない!
先生のフレームワークを体得すべく授業でひたすら練習をする、
というのは、実践を重んじるケネディ・スクールらしいなぁ、と
これまた非常に新鮮だった。(かなり苦しんだが。。。)
***
と、Ganz教授の授業は、毎年非常に評価の高いコースだが、
私の同級生には途中で脱落(ドロップ)した人もいたりする。
なぜ落としたのか気になって彼に話を聞いたところ、
「先生の活動家としての実績、
そしてPublic Narrativeのコンセプトは素晴らしい。
でも先生のフレームワークは結構細かく決まっていて、
効果的にハマる人もいるけど、
全てのケースに対して汎用性があるわけじゃない。
僕には合わなかったよ。」
とのことだった。
確かに、その側面はあるかもしれない。
しかし、個人的にはその限界も理解しつつ、エッセンスを学び、
そして「練習あるのみ」、、と、
体得するまでの過程を理解することができたのは
非常に面白かった。
***
アメリカでは、「市民が世の中を動かす」という感覚が結構ある。
日本で市民運動が広がる日は来るんだろうか。
鎌田さんの活動にも注目している。
〆
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