キャンパス子育て事情:自分で環境を作り上げるということ。

ボストンに来てから、

学校の子育てへの理解と優しさには感動しっぱなしである。


最初のオリエンテーションでも家族への配慮がコメントされたと書いたが、

その後も「家族との時間を大事にせよ」 「家族に授業の様子を見せよ」

などと教授陣にも事あるごとに言われ、

パーティなどのイベントが当然配偶者/ パートナー・子供ウェルカムなことに加えて、

夕方の公開授業等では会場に赤ちゃんを連れて来ている同級生も結構いる。


かくいう私も、

有名教授のハイフェッツが

急遽授業外で夕方レクチャーをしてくれることになった時、

ベビーシッターさんが体調不良でお休みしており、

抱っこ紐で赤ちゃんを抱えて聞きに行ったが、誰も気にしていなかった。

(むしろ、後ろの方に立っていたら、

「赤ちゃんが音出したって大丈夫だから、重いだろうし座りなよ」

と同級生が気遣ってくれた。)


「家族もケネディ・スクールでの大事な経験の一部であり、

 社会人の生徒が最大限学ぶ時間を作れるために、家族も含めてきちんとサポートする」


という意識を学校側がはっきり持っていて、

それを伝えてくれている。


そのようなサポートの意識が学校側にあるからこそ、

どんな事情がある学生でも安心して学業に打ち込める環境になるということだろう。


授業やアカデミックの内容だけではなく、

そういった「学ぶ環境づくり」に対する情熱が、

一流の一流たる所以だなぁ、と実感。


日本で報道されている某医学部の女性の試験結果改ざん問題では

「女性は出産・子育て等で職場・学校を離れてしまうから」

ということが受け入れを少なくする理由になっていたが、

その態度では世界中の才能ある人々を惹きつける場にはならない、

というのがまざまざと証明されている気がする。


***


さて、生まれて1ヶ月の子供(二人目)がいるアルバニア人の弁護士の友人が、

休み時間に「授乳室に行かなきゃ。。」と言っていた。


ケネディ・スクールの校舎内にある授乳室(Lactation Room)は、

きちんと冷蔵庫も完備されているので、

母乳で育てている彼女が搾乳して保存しておくことができる。


なんてったって、入学手続きの中で

「授乳室近くのロッカーを希望しますか?」

という項目があって個人的には驚いた。


が、先日開催された、

先輩家族との情報交換会(これをちゃんとセットしてくれる学校側も素晴らしいが。)で

先輩達の話を聞いて、


「受け入れてくれる体制」は初めから整備されていたわけではなくて、

過去の学生達が必要なものを積極的に働きかけて作られたものだ、

そして、今も発展途上で進化しているのだ、


ということが良くわかった。


***


情報交換会は、

「家族が授業を聴講するには」

「近くに良い学校はあるか」

「〇〇の時どうしていたか」

など、

家族にまつわる情報や経験談について共有することが目的なのだが、


今年2年目になる女性が、


「皆さんが使っている授乳室、以前は本当にショボくて、

 頑張って働きかけて今の使いやすいものにしてもらったんです!」


「金曜日の夕方に開催するガーデンパーティ、

 子供が楽しく遊べるように、遊具を置いてもらうようにしたんです!」


と説明してくれる一コマがあった。


彼女は、「Parent advocacy group」という学生組織を作って、

親達が学生生活で感じている不便を学校側と交渉して改善しているというのだ。


学校側の担当者も


「例えば、Advocacy groupから、ハーバードの保育園は8時乃至8時15分からだから

8時半の授業開始だと、預けてから行くには間に合わないという要望が来て。

それは、コース設計の担当者に確認したら

すぐ変えられるということだったから45分に変えたのよ」


「学校側が気づかないことも沢山あるし、

言ってくれれば改善できる内容も沢山ある。」

と言っていた。


これを聞いて、


さすが公共政策の実務家達が集まる学校だなー、


環境とは自分たちで作り上げていくものだ、という意識が学生側にもあるんだ、


と目からウロコが落ちる思いだった。


「アメリカはすごい、ハーバードはすごい、日本の学校ってなんでこうならないの?」

となりがちな自分の思考回路、

それがそもそも間違っていることが良く分かった。


この学生の意識あってのこの学校なのだ。。。


学校のテーマにもなっている、


“Ask not what your country can do for you, Ask what you can do for your country”


は、ケネディ大統領が国のことを指して言った言葉だけれど、


自分が学校の環境づくりに貢献するということも

同じように通じるものだよなぁ・・・と。


ちなみに、今改善したいと思っている事項

(例えば、保育料が高すぎる、教授の意識を変えて欲しい、等)についても、

学内で発行されているオピニオンサイトで発信されている。


***


Don’t take things for granted.


これがキャンパス子育て事情から得た私の学びである。

(ちなみに、もちろんオムツ替え台も校舎内に完備!)


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