魅惑のショッピングデイズ:「知のディズニーランド」編。
* 2018/9/18追記: Jardin教授の持っている二つの授業「Making of a Politician」と「Running for Office and Managing Campaigns」の授業を間違いました。。Making of a Politicianは、選挙戦略ではなくて、政治家としての広報戦略(カメラの前でディベートしたり)が主な授業でした。
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しばらくご無沙汰してしまった。
サマープログラムが終了してから、日本での用事のために帰国しており、
授業開始ギリギリにボストンに戻って来た。
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さて、各学期の最初の2日間は「ショッピングデー」が設けられており、
その期間は、生徒達がどの授業を選択するか決めるために、
教授陣が本来1時間15分の授業を、30分づつ2回に分けて
「私の授業はこんな感じですー」
というショーケースをしてくれる。
この期間はどの授業も出入り自由なので、
学生は、自分の興味のある授業の開催時間を確認して
授業から授業へ渡り鳥のようにワサワサ移動する。
その時の羅針盤になるのが、
どの授業がどの時間どこの部屋で開催されている、という一覧と
各授業毎に発行される授業要項、Syllabusだ。
Syllabusには、
教授の連絡先、教授の授業アシスタント達の連絡先、
各講義回の授業内容、各回の事前課題、レポートや試験の成績のつけ方、要求など
必要な情報全てが書いてある。
この数日間は、
みんなお手製のスケジュール表やら印刷したSyllabusを握りしめ
同級生同士、廊下ですれ違うたびに「あの授業出た?」「どうだった?」
とか言いながらワサワサ、ソワソワしているのだ。
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ところで、
以前、日本である機会にジャパンタイムズの大門小百合さんにお会いした時、
私がケネディ・スクールに行く話になり、
大門さんご自身がニーマン・フェロー(名誉あるジャーナリスト・プログラム)として
ケネディ・スクールに行かれた経験について
「私の本、参考に送るよ!」と言って下さって、
まさかの本当に数日後に本が届いた。(そういうの、とっても素敵だと思う。。)
その大門さんの旦那様との共著
「ハーバードで語られる世界戦略」の中で、
旦那様の田中宇さんが、
ハーバードを「知のディズニーランド」と評している。
まさに、このショッピングデーは、
「あの授業も、この授業も面白そう・・・・」という
知のディズニーランドで彷徨う2日間なのだ。
しかし、シラバスに書かれた膨大な宿題や課題の量を見ると、
取りたいと思った授業全部を取るのは到底不可能で、
しかも様々なスピーカーイベント・課外活動があることを考えると、
300もある授業リストの中から、1学期あたり4つか5つに絞らなくてはならない。
どんな授業が開催されているかは、
ケネディ・スクールのページで公表されているので、
もちろん受験前にみんな「これを学びたい」と目星をつけてくるのだが、
実際ショッピングで意外な発見もあるので、
教授との相性などを見極めつつ、
過去の先輩達の「授業評価」を見つつ、
自分の本当に取りたい授業は何か見極めるソワソワ期間だ。
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そして、この2日間が「ソワソワ」な理由はもう一つある。
たとえ自分の気に入った授業があったとしても、
その授業が人気で教授の受け入れる限界人数を超えると、
「Bid」、すなわち入札になるのだ。
所属プログラム毎に配られる手持ちのポイントを、
どこで何点使うのか、、、
かなり水面下での心理戦が行われているのである。
例えば、どんな授業が人気なのか。
詳細ご興味あれば、大先輩方がこんな本を書いているし、
友人でもある彼のブログにも彼が受講した授業の素晴らしいサマリーがあるが、
ご参考まで、今年入札になったいわゆる「名物」授業を紹介する:
今日ちょうど入札が締め切られ、結果が公表されたのだが、
全ての授業の中で、一番ポイント消費数が多かったのは以下の三つだ。
Making of A Politician – Steve Jardin
政治家を目指す場合に必要な選挙戦略を練る授業。
実際に百戦錬磨のCampaign ManagerだったJardinがノウハウを伝授する。
どの選挙区で、どのような予算で、どんな広報チームで、、など
グループに分かれて立案する他、ファイナルペーパーは自分の選挙戦略を書くという授業。
Colum and Opinion Writing – Jeffrey Seglin
Op-Ed(論説)などの書き方を具体的に指導する授業。
何本も書いて練習し、New York Timesでコラムを持っていた名物教授が添削もしてくれる。
他にも政策メモの書き方の指導や、スピーチライターだった人の授業など、
政策実務家のスキルだけに、Writing系授業は総じて人気が高い。
The Arts of Communication- Timothy McCarthy
人権活動家でもある教授の、公共の場でのスピーチの授業。
授業での生徒のスピーチは録画されて評価され、
教授・同級生から寄ってたかってダメ出しされるという厳しい練習の場でもある。
特にJardinの授業は、教授曰く、このような授業は世界どこにも無い、とのことで
手持ちのポイントを全て掛ける覚悟がないと入れない超激戦授業だ。
(同級生達よ、みんなどんだけ政治家になりたいんだ。。。)
アメリカのキャンペーン手法が核の授業だが、
アメリカの先進的な(?)手法を体得しようと、非アメリカ人学生も結構受講している。
日本では考え難いような、
かなりアメリカンチックで実務的な内容の授業が多いと思われただろうか。
これぞ、プロフェッショナル・スクールと!言わんばかりの職業に直結した授業達だ。
アメリカ人が話すのが上手だったりする背景には、
こういったトレーニングも含めてちゃんと真剣に取り組んでいるから、と思うと
日本人として「こんな目に見えない内容で授業なの?」
とか思ってしまうメンタリティーをまず改善しないと、
世界の舞台で堂々と主張できる日本人は増えないなー、と改めて思った。
ちなみに、
ハーバードよ、アカデミック方面はどうした!!と思われたかもしれないが、
例えば経済学や国際関係など、講義が主になるような授業は
多少人数がover subscribeしても、大きな教室で開催されることになるので、
上記のような、人数を限定してグループでワークしたり、
教授の指導が密に入るような人気授業が人数制限が厳しく、
需給バランスで入札になりやすいという側面もある。
それ以外にも、
・ Practical Solutions For Technology's Public Dilemmas ― Ash Carter
・ Great Power Competition in the International System ― Nicolas Burns
・ The Geopolitics of Energy ― Meghan O'Sullivan
Obama政権で直近2017年まで国防長官だったAsh Carterの授業や、
2008年まで国務次官(トップ外交官)と努めたNicolas Burnsの国際関係の授業、
ブッシュ政権で特別補佐官だったエネルギー政策の専門家Megan O’Sullivanの授業、
いわゆる実務家としても一流な「著名教授」の授業も人気が高い。
そして人気授業・名物授業だと、その噂を聞きつけて、
MITやタフツ、ハーバードの中でも教育大学院や公共衛生大学院、
様々なプログラムフェロー・研究員なども授業を取りにやってくるため、
(逆にケネディ・スクールの生徒達もMITの人気授業などに駆けつけるわけだが)
競争はさらに熾烈を極めるのだった。
***
と、いうことで、ここ3日間くらい、
結構ワサワサ・ソワソワしたが、
私が取りたい授業は入札に突入した2つも含めて
無事取りたいものが取れたので、
「授業選択終わったー!パーティだー!」(なんでもパーティか・・・)
という同級生コミュニティのWhatsAppメッセージの山を横目に見つつ、
今日は安心して寝れます。
授業を選ぶだけでこんなにも労力使うとは。
さすが「知のディズニーランド」。
〆
(握りしめていた(笑)シラバス達。)
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