電子国家エストニアの政府CIOから学んだこと。

日本では今日で平成が最後のようだ。


国民の平和のために力を尽くしてくださった陛下に

心から敬意と感謝を込めて、

遠くから新しい時代の幕開けを喜びたい。


そして、ボストンでは、今週で授業も最後。

ついにここまで来てしまった。。。!

平成を追いかけてもうあと約1ヶ月でボストンを去るんだなぁ。。


***


さて、先週の話だが、

授業が終わって外に出たら、

電話に保育園から着信。


嫌な予感とともに、電話に出ると、


「お熱が出ました。」


それ以降の予定をキャンセルして

保育園にお迎えに。


その日の夜は学生生活最後の

フォーマルなダンスパーティ@水族館で、

少し楽しみにしていたのでがっかり。。。


しかし、熱で苦しむ娘を傍目に、

同級生から続々と入ってくるドレスでキメた写真に

いちいちがっかりする自分にも罪悪感。。。


それから数日は娘に付きっきりだったのだが、

翌日の朝の授業だけはどうしても行きたくて、


急なお願いでも朝8時から快く駆けつけ助けてくださった

ベビーシッターさんに心から感謝しながら、

授業に向かった。


***


なぜその日にどうしても授業に行きたいと思ったかと言うと、

Disrupting Bureaucracy: Understanding Recent Efforts in Digital Government

という今期聴講しているDavid Eaves教授の授業が、


今学期の中で最も聞きたいと思っていた

エストニアの政府CIO Siim Sikkut氏の登壇回だったからなのだ。


David Eaves教授といえば、

秋学期の授業Digital Governmentは

学内で人気のある授業の一つで、

政府のIT政策についての授業なのだが、


今回聴講依頼した授業は、その続編的な位置付けで、


・なぜ政府のITサービスはクソサイト・サービスが多いのか?


・公務員というインセンティブをつけるのが難しい世界でどう言う仕組み・チームを作れば、ユーザー・セントリックでイノベーティブなサービスが実現できるのか?


・レガシーシステムや分断されたデータがある中で、様々な部署の協力を得なければいけない中で、どこから手をつけて効率的にサービスを統一していくのか?


・成功するにはどんなことが必要(政治サポート、規制、予算権限、イノベーションを起こせる人員確保)なのか?


といったテーマで、


以下のような国や自治体の先進的なデジタル活用事例について、

そのトップやチームから直接話を聞き、学ぶ授業だ。


イギリスのDigital Government Service

• カナダオンタリオ州のOntario Digital Government 

• マサチューセッツ州のDigital Service 

• 国防省のペンタゴンのDigital Service

• アルゼンチンのDigital Service


で、今回はエストニアのCIOがその経験を教えてくれる回だった。


電子国家エストニアそのものについては、

結構日本でも知られていると思うので、

(ちなみに今回のForbes Japanはエストニア特集らしい)

あまり触れないが、


・国民がIDカードを持っており、ポータルからIDカード/モバイル指紋認証でログインして

 税金、医療、雇用保険、年金、教育、自動車免許などあらゆるサービスを手続きできる。

・政府の統一データベースからあらゆるサービスに個人データが共有されている。

・国民がデータの所有者であり、自分のデータに誰(どの省庁)がアクセスしたか確認できる。

・いち早く電子投票を行なっている(現在立法府の選挙の44%はオンライン)


などは有名な話だ。


そんなことを前提に、今回私が面白いと思ったのは

以下の内容だった。


1) なぜ電子国家になったのか。


• 旧ソ連から独立した時に、人口130万人という東京の1/10の小さな国ながら、国防、福祉など国として必要なことを賄う必要が生じた一方で、資金が潤沢にあったわけでは無く、「超効率的」になる必要があり、その手段としてITを徹底活用することにした。IT化は「必然性」によるものだった。


• IT活用を国家戦略にした時は、ある種Ignoranceが大胆な決断をさせた(知らぬが仏状態)部分もあり、政府がリスクをとって挑戦と失敗を繰り返しながら学んで来た。また、ソ連から独立した時に何も無い状態からスタートしているので、レガシーが無く、白紙から新しいものを作りやすかったという環境もある。


• 初等教育からIT/codingを学ぶので、国全体でITに精通した人材が育っている。ちなみに、CIO自身も大学(プリンストン)の専攻は政治・政策であるが、Skypeの開発に携わるなどエンジニアバックグラウンドがある。また、IT企業のクラスターを育てる意識もあったので、政府は外部ベンダーを積極活用し産業を育てて来た。


• 税金手続きの簡素化など、国民にとって利益が大きいサービスから徐々に始めたことで、国民が受け入れる土壌ができており、IT化に対する反発は起きていない。ITがいかにあなたの効率、安全、プライバシーを向上させるのか、という説明をして納得してもらうことが大切。


2) 電子投票について。


• 電子投票は地方選挙から開始し、今やEU投票や国家投票でも半数近くが電子投票する。


• 2007年にはサイバーアタックを受けており、EUからも脆弱性が指摘されたりしているが、一方で逆に先進的取り組みとしてEU、NATOなどと情報共有することで広い範囲から知見を受け入れて共に改善し続けている。


• また、電子投票で問題が起きた時のために(1)電子投票は事前投票に限る(何かあった場合には紙で再投票できる余地を残す(2)オープンスペースでの投票ではないので、パワハラなどで誰かに投票を強制させられるなどのリスクも考え、何度でも投票し直せる仕組みにする、など、電子的手当以外の部分でも対策している。


• 過去のデータからは紙の投票でも電子投票でも投票している人は変わらないという結果が出ている。すなわち、電子投票にしたから特別若い人の投票が増えたといことも無く、投票率が上がったということもない(少し残念・・・)。


3) 発展途上のものも多い。


• 政府のデジタル部隊の役割は、1)国のデジタル戦略を考えること2)規制を通じて各省庁のデジタルサービスを横断的に監督すること3)政府傘下のデジタルプロジェクトの資金を提供すること(プロジェクトの申請を受け付ける)4)各サービスが横断的に使える基幹データのプラットフォームを提供すること。


• エストニアのデータプラットフォームは素晴らしいが、ユーザーインターフェースとしてユーザー・セントリックになっているかというと、UXは課題がまだある。


• また、政府が保有しているデータの活用はまだまだ発展途上。


エストニアの規模の小ささ、IT人材の豊富さ、国民の理解、レガシーの無さなど、日本にそのまま転用できない部分はもちろんたくさんある一方で、学びも多くあった。


他の国のサービスの話も(むしろ日本に課題が近く)とても勉強になった、

今期きつい中でもこの授業で続けてよかった。。。


生産性向上、人不足、、、日本の課題を考えれば、

デジタル化の加速化は日本の最優先の課題の一つ。


先週、初めて国会答弁でタブレットを使っているというニュースが出ていたが、

頑張れー。。


ハーバードのペーパーの採点ですら、

今や教授がタブレットでpdfにコメントつけて返してくれる世の中です。。


(住んでいるアパートの部屋から。)

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