卒業式、それは終わりの始まり。
5月30日の卒業式で無事ケネディ・スクールを卒業致しました!
ご支援を賜りました皆様、心から有難う御座います。
そして、怒涛の卒業ウィークからすぐさま帰国し、
ついに日本に戻って参りました。
実は友人達のインタビューなどもまだ公表できていないものもあり、
場所が変わっても執筆は続けたいと思いますが、
取り急ぎ卒業式の様子をば。
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米国の大学では卒業式のことを「始まり」の意味である
“Commencement”と呼ぶ。
卒業は通過点であり、
これからの人生で何をするかの始まりの地点に過ぎない。
そんな意図を持った素晴らしいしきたりだ。
「卒業ウィーク」と言われるように、
米国大学の卒業式は、
一大事ということで全世界から親御さん達が集まってきたりするので、
(我が家も両親が渡米してきてくれました。)
卒業式の週は、賞の授与、ゲスト・スピーカーの公演などの式典に加えて、
クラス・家族でのソーシャル・イベントなど様々ことが行われる。
そして、ハーバード大学では
学部、ビジネス・法学・医学など各大学院、博士課程の全ての学生の卒業式が
同じ日に行われるので、卒業式の週のハーバード・ヤードは
いつもと違う雰囲気となり、街全体がお祭り騒ぎとなる。
卒業式の朝は、
それぞれの大学院や学部生の場合は学生寮から、
バグパイプの先導でハーバード・スクエアの街を練り歩いて
会場まで行進する。
その際、デザイン・スクールはレゴ・ブロック、
ロー・スクールは裁判の時使う小槌など、
それぞれの大学院が特徴のある物を持参するのだが、
ケネディ・スクールは地球儀だ。
(行進中。)
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会場に着くと、ハーバード大学全体で卒業式では
学生を代表して2人の生徒(学部生と大学院生)が選ばれて
スピーチをする。
なんと、その大学院生代表は、我らがケネディ・スクール同級生であり、
アルジェリア出身のLucilaちゃんだった。
スピーチでは、インタビューでは紹介できなかった、
彼女がフランスに渡ることになったきっかけが語られた。
お腹が空いていても親に気を使ってそう言えなかったくらい
貧困状態にあった彼女の家族のアルジェリアでの生活。
その内戦時に際して、政府からフランスへ渡る難民募集の張り紙が出た。
彼女のお母さんは、家族を行かせたいと集会場まで行ったが、
字が書けなかったので家族の名前をかけず、
諦めて帰りかけた時、
その様子を見て追いかけて名前を書いてくれた
見ず知らずの男性がいたそうだ。
その男性のおかげで、
彼女には教育の機会が開かれ、今がある。
大きな目標を追うことももちろん重要なことであるが、
目の前の人を助けること、小さなことがその人の人生を大きく変えることもある。
そんな素晴らしい物語だった。
ビジネス・医学・法律・・色々な大学院がある中で、
彼女が全てのハーバードの大学院生を代表して
立派なスピーチをしたこと、
たくさんの人を感動させたことをとても誇りに思う。
(ちなみに彼女もスピーチ前は死ぬほど緊張していた。
数千人の学生や観客は勿論、メルケル首相や学長や来賓らの前で
スピーチするのだから、そりゃそうだろう・・・。本当に立派だ。
写真は終わって気が抜けた彼女と。)
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そして、今年のハーバード大学全体の卒業記念講演は
ドイツのメルケル首相。
(写真はHarvard Magazineより。)
現代において世界で最も強いリーダーとも評されるメルケル首相。
そして個人的にも尊敬する同氏のスピーチを
この節目に聞くことができ本当に嬉しかった。
報道では、
「無知と偏狭の壁を壊す」
という部分がトランプ政権を批判したとハイライトされているが、
私は彼女のスピーチの全体テーマ
「全てのことは変わりゆく」、
即ち、彼女がベルリンの壁崩壊を通じて感じた
「Anything that seems to be set in stone or inalterable can, indeed, change」
というメッセージに感銘を受けた。
“The moment when you step out into the open is also a moment of risk-taking. Letting go of the old is part of a new beginning…. I believe that time and time again, we need to be prepared to keep bringing things to an end in order to feel the magic of new beginnings and make the most of opportunities.”
私が今回の留学を通じて最も学んだことは、
「自ら行動することが社会を変える」と本気で考え
市民活動、起業、政策への従事など様々な形で変化を追求する
アメリカでの個人・社会・民主主義のダイナミズムである。
この責任を担うことがリーダーの第一条件であり、
そして、その責任を全うする上で最も重要なのは、
共感力だと確信。
ケネディ・スクールの卒業記念講演をした
サントス元コロンビア大統領の言葉を借りれば
「他者へのEmpathy」を持つこと、
メルケル氏の言葉を借りれば
「他人の目を通じて世界を見れば難しい問いにも答えを探すことができる」
ということだ。
古きに終わりを告げ、リスクをとり新しい始まりを。
終わりと始まりを感じる卒業式でした。
〆
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