履歴書の穴を問わない「Come Back」制度を日本でも積極活用すべきと思う件。



もう数週間前だが、

Academic DeanのIris Bohnet教授が主催していた

「What Works」というワークショップに参加した。


The Women’s Leadership Boardという企業向けのプログラムだったのだが、

Oval Officeの卒業者として特別声をかけていただき、


ロレアルのアクイジション・グループのヘッド、

UBSのグローバルのダイバーシティー責任者、

ファンドやコンサルのマネージング・パートナー、

様々な起業家など、


めちゃめちゃ凄い&かっこいい女性達が20人くらい集まっていた中、

恐れ多くも、彼女達との議論に、

数人の学生達と一緒に混ぜていただいたものだ。

(キャンパスは お休みモードで人が居ない。。@食堂)


以前記事でも触れたが、

ボネット教授は行動経済学者で、

ジェンダーなどのバイアスを職場でいかに克服するかをテーマとして、


例えば、


・ 1970年代に米国のメジャーなオーケストラでは、採用時にカーテンで仕切って、見た目ではなく楽器の演奏の質で行う転換をした。その結果、女性の採用が30%伸びた。


・ ノーベル賞受賞者が95%男性であることへの対策として、受賞者の推薦を依頼する際、1人の候補の名前を出すのではなく、4人出すように用紙を変更した。(複数選択する場合、多様性が勘案される、という行動経済学の研究を根拠としている。)


など、どうしても人間なら取り除けないバイアスを乗り越えるための施策について、

実効的なエビデンスに基づく提案を続けている。


ちなみに、「What Works」(日本語版のamazonはページの最後に貼り付けた)は

ボネット教授の有名著書のタイトルでもあり、

コンセプトはこの3分のビデオが非常に分かりやすい。


***


今回のワークショップでは、

雇用時、昇進時、企業文化、などに分野について、

男女差(だけに限らず多様性)に関する課題、それを克服するすべを

最新の研究を聞きながら議論するというものだ。


個人的に、ワークショップでの一番面白いと思ったのは、

UBSをはじめとして、多くの米国企業が採用し始めているという

「Come Back」「Returner」制度だ。


例えば、夫の駐在や子育て、介護などによって

数年間から10年長まで労働市場から離れていた女性、

女性だけに限らず、病気・怪我などを含めてあらゆる理由で

履歴書に空白期間がある人について、


その履歴書の空白期間を問わず採用を受け付ける、というものだ。


このUBSの提供している経験談を見ると、

休み期間は1年から数年、10年以上の人までいる。


私も子供が欲しい時期に夫の海外留学に帯同していた期間があり、

その履歴書の空白期間を説明するのに苦慮したりする。


企業側は、履歴者の空白を問わないだけではなく、

スムーズな社会復帰とその後の活躍を支えられるように

復帰タイミングで同期などのネットワークを作ったり、

メンターやトレーニングなどを充実させたりしているとのこと。


制度を採用した米企業では、この取り組みは評価されているようで、

能力的にも高く、何より意欲が極めて高い人を採用するのに成功していると!


確かに、周りを見て、

めちゃめちゃ優秀な女性達が子育てをきっかけに離職しているのを見る。


昨今では、配偶者の駐在に伴い3年以内なら復帰可能などの

制度が整備されている大企業は多くなってきたが、

年数制限などでその枠に乗れず、泣く泣く諦める人も散見される。


日本では、第一子出産を契機に女性の約半数が離職、

復帰する場合でも非正規になる場合が多い。


しかし、子育てに集中する期間は、100年の人生でほんの少しの間だ。

それ以外の様々な理由での退職でも、時と共に状況は変化する。

その一時の選択の結果で、能力や過去の経験があっても

後々に多大な賃金格差が発生するのは勿体ない。


企業側からしても、

明らかに優秀で、ある程度の社会人経験で実績や基礎もあるようなお宝人材が沢山いるのに、

しかも人余りの世の中ならともかく、日本はこれから人不足となる状況下、

改めて採用しないなんて、理由が無い。


日本の場合、

上述の帯同復帰制度や、〇〇休暇などを伸ばすことで

企業制度として一部対応してきた部分もあるのかもしれないが、


終身雇用がもはや前提ではない(と企業トップが主張する)今日においては、

辞めた人(違う会社であっても)を雇う門戸を広げるのは

能力ベースを担保するある種の緊張感と、期間や事情の幅を確保する上でも

利点が多いのではないかと思う。


ということで、日本企業の皆さん、

是非これご検討いただきたい!!!


他にも、面白い具体施策はたくさんあったのでどこかで棚卸したい。。


***


ちなみに、ワークショップの内容だけではなく、

米国内外の最前線で活躍するビジネス・ウーマン達のリアルな声が、

非常に面白かった。


特に、世代によっても意見や苦労の点が違うのが見えた。


米大手の消費財や飲料メーカーの幹部を務めたことがあるベテラン女性(恐らく50代)が:

「CEOの後継者を指名しようとしていた時、女性候補が自ら機会を断った。彼女は能力としても他の候補より高かったのに。また、優秀で幹部候補の女性が、「家族の事情で引越ししたくない」など、グローバルヘッドになるための形式要件を満たさない選択をするケースが多い。「Women Sabotage」問題があると思う。」

という課題提起をした。


それに対して、もう少し若い世代・政策目線の人々からは、

「CEOになるために、本当に海外駐在が必要なキャリア・パスなのかも含めて、

要件を見直すことも必要なのでは無いか」

などの意見も出された。


男性と同じように戦い抜いてきた世代の女性経営者にとって、家族とバランスをとりながら仕事をしている後続の女性達を歯がゆく思ったこともあるのだろう。


一方で、新しい世代の人々は、前提を変えるべきでは無いか、両立させながらも活躍できる道はあるのでは無いか、という考え方だ。


様々な世代の女性達のリアルな悩みを聞きながら、共感することも多く、

子供が複数人いてパワフルに活躍している女性も多いことに感動。


とにかくその勢いに圧倒されたが、

とても面白い時間だった。


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